トラベラーズ ブランケットと共に ―羊をめぐる衣食住―

トラベラーズブランケットと共に

「星の下で眠る―トラベラーズブランケット」という連載を、スピナッツ誌上で始めたのは1992年のことでした。旅先の英国コッツウォルドで見つけた白茶ブチのジェイコブのブランケットとの出合いに始まります。織りネームには“Jacob”、そして(もう取れて無くなってしまったのですが)たしか”Travelers Blanket”とあったので、私はこの正方形の、少し小ぶりな毛布を「トラベラーズ ブランケット」と呼ぶようになりました。

    そのブランケットは、ジェイコブのフリースの色と毛質をそのまま生かした物でした。白茶ブチの毛を色分けした千鳥格子で、ふっくら厚みのある二重織りのブランケットを革のベルトでリュックにくくり付ければもう旅する気分。電車待ちの田舎の駅の冷たい待合でゴロンと横になったとき、テントの中で寝袋の上からかけたとき、雨が降ったとき、どんなときでもこの1枚を頭からすっぽりかぶれば水も弾いてくれるし、あったかいのです。ブランケットは私の体を守ってくれる、まるでハウス=家のようだと思いました。 雨露を凌ぐのが家だとしたら、ブランケットは、一枚の布で体を温かく守ってくれるシェルター…人の肌に一番近いソフト ハウスだと思いました。

   以来ブランケット好きが高じて、いろんなブランケットを作家さんとコラボして作ってもらい連載しました。働く人のためのL字のブランケット。ピクニックに持っていきたい若草色のブランケット。おばあちゃんが作ったモチーフ編みのブランケットなど。その中で「安心毛布」という号がありました。スヌーピーで有名なマンガ『ピーナッツ』でライナスがいつも持っていた子どもを安心させるために掛けてあげるブランケットです。安心毛布の記事を書いていて気が付いたのは、ブランケットは体を守ってくれるハウスだけではなく…話し相手であり、守り包んでくれる母だということ…。とにかくライナスは毛布といつも一緒、毛布は彼の心を安心させてくれる友だったのです。ライナスの毛布は私の子どもの頃に、大好きだった鉄腕アトムの水色の毛布と重なりました。

  1995年の阪神淡路大震災、そして2014年の東日本大震災…。日本を襲った大きな災害で私自身の考え方も変わりました。出掛けるときは必ず水と食べ物と…そしてブランケットを持って出るようになったのです。どこで何があっても…その場で何時間立ち往生することがあっても…「なんとかなる」と思える心の支えを持って出る、ということです。  

  “ブランケット”、それは私にとって「一人でも生きていける」と思える頼もしい相棒。体を包み、心を支えてくれる物なのです。

このブログでは、トラベラーズ ブランケットと共に出掛けた先で出会った人や物事、楽しい色々をつづっていきたいと思います。

本出ますみ

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ウール クラッサー(Wool Classer・ウール格付け人)。羊の原毛屋SPINNUTS/スピナッツ出版代表。1958年生まれ、1984年に京都で原毛屋を...

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